2006年12月30日

NODA MAP「ロープ」

頭痛のする、一歩距離感を間違えれば吐き気がする意欲作かつ奥の深い秀作。

テーマは、暴力という「力」が、小さなきっかけから始まって中身のないままバブルのように膨張し続け、最後にははじけてそこに無力という「力」だけが残るということであり、ただその事実を虚実絡めて距離感をとりながら力強く、やや苦しいくらいにストレートに描かれています。「まだ遅くはない」というのは野田さんの中に戻った希望なのか、それともその希望も繰り返されているという無力感なのか。

この作品がもしアメリカで公開されたら、あるいは太平洋戦争で描かれていたらと考えると頭痛が治まりません。日本人にはベトナム戦争という原風景がない、少なくとも私には全くといってない。だからこそ、距離を巻き込まれることなく見られたのだと思います。もしこれが日本人に刷り込まれている逃れることのできない太平洋戦争の日本の姿で描かれていたら・・・「あったことをなかったことにしてはいけない」・・・私自身に原風景はないとはいえもっと堪えて、吐き気をもよおしたに違いない。それくらいストレートでした。この距離感でいられらことが作品を素直に受け入れる助けになったように思います。

舞台としてはリングと昔よくあった電話BOXサイズの引きこもり部屋くらいで相変わらずとてもシンプル。宮沢りえさんの独り舞台ともいえる彼女の存在感に感動。彼女の透明感が全体にいきわたっていたことがこの作品の救いであったように思います。藤原竜也さんのロープの外に逃げる叫びにならない叫びは「オイル」の松たか子さんに匹敵。その他出演者も、野田作品のいつもように平等に役が与えられるというよりはかなり薄い設定ではあったものの安定した役回り。

今回は、はっきり言って前半の笑いは不調に感じました。しかし、それさえも救いでした。これが前半の笑いがあまりに乾いたものではなく快調であったならば、後半のズシリと来る鉛の落差に耐えられなかったかもしれない。

■公演内容
pic_rope.jpg
NODA・MAP第12回公演「ロープ」
作・演出・出演/野田秀樹
出演/宮沢りえ 藤原竜也 渡辺えり子 橋本じゅん 宇梶剛士 三宅弘城
   松村武 中村まこと 明星真由美 明樂哲典 AKIRA
美術/堀尾幸男
衣装/ひびのこづえ
会場/Bunkamura シアターコクーン
日時/2006年12月30日(土) 19:00開演
料金/S席 9,500円
posted by 奥田圭太 at 22:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・映画・舞台・ライブ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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