2006年12月26日

「當る亥歳 吉例顔見世興行−夜の部−」

大千秋楽。襲名披露らしいお遊びたっぷりの大千秋楽ならではのおまけたっぷりの公演。最後の最後に主役が舞台の上にいないにもかかわらず拍手が鳴り止まず、急きょ楽屋から主役が飛んでくるようなオールスタンディングの幕切れ。本当に中村勘三郎とは心から大衆に愛されている役者である。

『平家女護島 俊寛』は仁左衛門さんの哀愁たっぷり。全編を通じた仁左衛門さんの機微の豊かさ、中盤の孝太郎さんの口説き、そして段四郎さんの悪役、この三者の絡まり合いがコントラストとなって完成度が高かったです。啜り泣きがあちこちではっきりとわかるほどの動きと表情だけで空間の温度を変えてしまう仁左衛門さんの奥深さに感動。

『口上』はハプニングあり。最後の最後の勘三郎襲名披露口上。途中中村源左衛門さんの死、松竹永山会長の死に触れられ、中村屋一門が大粒の涙を流して止まらない始末。それだけ2年近くに及ぶ襲名巡業の紆余曲折もあったのでしょう。全ての言葉が微笑ましく、全ての言葉が奥深いものでした。

『京鹿子娘道成寺』はまさに待ってました。十八代目中村勘三郎十八番の舞踊と言えるでしょう。まずその体力と足腰という肉体的なものから驚かされ、女性の機微の表現と女性という枠さえも超えてしまう人間としての執念に全身に痺れが走ります。舞踊一つで客席が凍りつくように静まることに感動。今回は中村屋一門が間間にハプニング要素も加えて笑いの要素を満点にして緩急がきいていて更にその凄みが際立ちます。最後に押し戻しがあることで勘三郎さんの美しさから立ち役の凄さまでを一気に堪能できる傑作。

『雁のたより』はまさに上方狂言。藤十郎さんが終始茶目っ気たっぷりで、軽いタッチで最初から最後までお客さんを楽しませます。勘三郎さんが飛び入り参加するおまけまでついてただただ軽いタッチのテンポの良さで和やかに過ぎていく時間。

『乗合船恵方萬歳』は絵のような色使いと各種舞踊の競演。ただし、今回は清水大希改め中村鶴松君がお客さんの視線を釘付け。子供が子供を背負っているようになってしまっている姿にもかかわらず舞踊になった瞬間大人顔負け。この少年はいつも心から歌舞伎を楽しんでいるのが全ての人に伝わるのが魅力的。最後は勘太郎さんがお客さんを思い切り喜ばせる幅広い舞踊を披露し、見せ場である翫雀さんと橋之助さんの小気味いい息ぴったりの掛け合いへ。幕引きはただただ絵として気持ちいい。

大千秋楽。いかにも大千秋楽の未だかつてないほどの笑いと涙が詰まった半日でした。中村勘三郎南座での襲名公演、昼の部では歌舞伎で手拍子が起こるという奇跡を目にし、夜の部ではお客さんが主役不在でも鳴り止まないオールスタンディングの拍手という奇跡を目にしました。そういう時を共有できたこともまた奇跡。

■公演概要
京の年中行事 當る亥歳 吉例顔見世興行〜十八代目中村勘三郎襲名披露〜
−夜の部−
『平家女護島 俊寛』『口上』『京鹿子娘道成寺』
『雁のたより』『乗合船恵方萬歳』
出演/中村勘三郎(勘九郎改め) 片岡仁左衛門 中村芝翫 片岡我當
    中村橋之助 坂東弥十郎 中村勘太郎 中村七之助 片岡愛之助
    片岡秀太郎 片岡孝太郎 中村扇雀 中村鶴松(清水大希改め)
    中村翫雀 市川段四郎 坂田藤十郎 
会場/京都四條南座
日時/2006年12月26日(火)14:00開演
料金/1等席 24,150円
posted by 奥田圭太 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(1) | 本・映画・舞台・ライブ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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