2006年12月01日

「當る亥歳 吉例顔見世興行−昼の部−」

猿若の芸を心身で満喫できる公演でした。

顔見世という華やかな舞台の中で、中村屋一門以外の演目と比較することができて、自分は歌舞伎好きである前に中村屋一門に脈々と受け継がれてきた猿若の芸が好きなのだと合点がいきました。それだけこの日の猿若の芸は輝いていました。

猿若の芸、中村屋一門に受け継がれているものは、凛とした佇まいの中にある、周りをも明るくする陽気さと軽快さとユーモアであると思います。そして、それが所作・芸の中に大きなコントラストを生じさせ、その全てがチャーミングさとなって人々の心を魅了するのだと思います。

『猿若江戸の初櫓』は必見です。登場のときからユーモアと清清しさが溢れ、勘太郎、七之助兄弟の息の合いっぷりに奇跡を思うしかありません。勘太郎さんのもはや完成と言ってしまいたくなるくらいの成長にただただ感嘆です。所作についても声色、舞についても勘九郎さん時代の新勘三郎さんにそっくりです。軽快なリズムと下半身の強さに惚れ惚れとします。何度でも観たい・・・。

『寿曽我対面』はいかにも古典。間も全て古典的なので慣れない人には遅すぎて眠気に襲われます。残念だったのは橋之助さん。威勢の良い若人五郎なのですが、今までにない歳を感じました。なぜだろう。華やかな衣装の並びに一足早いお正月のような目の徳といった感じです。

『義経千本桜 道行初音旅』は坂田藤十郎さんと勘三郎さんの競演。これ以上に何を書けましょうか。ともに舞の名手としか言いようがありません。

『義経千本桜 川連法眼館』もTHE古典です。ですが、勘三郎さん、仁左衛門さん、勘太郎さんの並びだけで圧倒的に成立しています。そして、この勘三郎さんは素晴らしかった。凛とした人間忠信とユーモア溢れた狐忠信のコントラストの見事さ、狐忠信の愛嬌と切なさ・・・、中村屋以外で何度か観た演目ですが、初めて泣いてしまいました。(実は以前に誰のとは言いませんがこの演目を観たときは眠気との戦いでした。)狐忠信の軽快な動きに思わず客席から手拍子が起こりました。こんな古典歌舞伎は初めてです。決してけれんなことは何一つありません、客席と一体になるものが間違いなくそこにあったのです。
勘太郎さんに惚れ惚れしていた私ですが、それでももっともっと別の次元に勘三郎さんはおられました。全身がガクガクするほどの感動です。

『お染久松 浮塒鴎』は舞踊。齢80近い成駒屋芝翫さんの熟練を堪能。舞踊好き以外には長いかも。

思えば、中村勘三郎さんの襲名公演を東京歌舞伎座、大阪松竹座、名古屋御園座、神戸文化ホール、そして待ちに待った私の地元京都南座と気づけば追っかけのように馳せ回りました。それも全て私の中にある猿若の芸に対する確信からだったのだと思います。

■公演概要
招木.JPG
京の年中行事 當る亥歳 吉例顔見世興行〜十八代目中村勘三郎襲名披露〜
−昼の部−
『猿若江戸の初櫓』『寿曽我対面』『義経千本桜 道行初音旅』
『義経千本桜 川連法眼館』『お染久松 浮塒鴎』
出演/中村勘三郎(勘九郎改め) 片岡仁左衛門 中村芝翫 片岡我當
    中村橋之助 坂東弥十郎 中村勘太郎 中村七之助 片岡愛之助
    片岡秀太郎 片岡孝太郎 中村扇雀 坂田藤十郎 
会場/京都四條南座
日時/2006年12月1日(金)10時半開演
料金/1等席 24,150円
posted by 奥田圭太 at 23:13| Comment(0) | TrackBack(1) | 本・映画・舞台・ライブ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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