2006年09月15日

「マッチポイント」

ウディ・アレンの新たな傑作です。

映画としてとてもよくできています。クラシカルでありながらもとてもPOPです。普通のストーリー(オチは強烈です)にも関わらず、恋愛劇に終わらずサスペンスのように最初から最後までハラハラドキドキしながら展開します。その魅せ方が目新しいものではないのですが、台詞も丁寧で、映像も的確でテンポ良く楽しめます。素材にもこだわっていて、書物やオペラ音楽といった様々な仕掛けが見事に内容としてふくらみと映画表現としての芳醇さを演出します。

内容もとても好きです。壮大なオペラのような愛・嫉妬・憎悪・虚栄・欲といった人間の本質をふんだんに露にさせながら、とても日常のように静かに描かれています。「運」というものがキーファクターになっていますが、私も運というものを人生のとても大切な要素だと思っており共鳴します。しかも、単純に運任せにしてしまうのではなく、他人の事実によって、運によって翻弄されていく主人公ですが、実はその運の裏返しが、主人公が前向きな行動を取っているときはいい方に転がり、誤魔化しや消極的決断による行動を取っているときは悪いほうに転がるというのがとても奥が深く面白かったです。それ以外にもロンドンという舞台に様々な社会構造が反映された見事な現代版オペラだと思います。

近頃のウディ・アレンのいつものパターンには飽きていたのですが、新たな舞台の下、練りに練られたホンと演出で、芳醇な中にも新鮮な結末を用意したこの作品は面白かったです。

■作品概要
題名/「マッチポイント(原題:Match Point)」
2005/イギリス/124分/アスミック・エース
監督・脚本/ウディ・アレン
出演/ジェナサン・リース・メイヤーズ スカーレット・ヨハンソン 
   マシュー・グード エミリー・モーティマー
会場/京都シネマ
誰よりも愛したNYからロンドンへ舞台を移すことを決めたウディ・アレン。その1作目となる今作は立身出世をもくろむ元テニスプレーヤーが、妻の兄の婚約者との情事に足を踏み入れとんでもない結末を招く・・・という一見ありがちなストーリー展開。しかし戯曲や絵画、詩などをふんだんにちりばめ、いつものジャズやスタンダード・ナンバーではなくオペラの名曲たちがスパイスされることでとてもスリリングで魅惑的なサスペンスへ仕上がりました。

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[タイトル] マッチポイント 初回限定版 (特別ブックレット付)
[出演] ジョナサン・リース・マイヤーズ
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posted by 奥田圭太 at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・映画・舞台・ライブ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

空を見よ。雲は流るる。

Bから教わった話を飛躍させてみる。

Bの家には中庭というか、ちょっとゆっくりできる屋外があります。軽いバーベキューをしたり、ちょっと天気のいい日はそこで食事をしたりできる素敵なスペースです。そこは、それ以上の贅沢な場所でもあります。ゆっくり椅子にもたれて腰掛けて、ただ切り取られた空を眺めることができるのです。これからの季節には最高の場所でしょう。

空。天気のいい空。青という色の奥深さを感じる。そこを雲が思い思いに流れている。ただ流れている。それを眺めることは心を空っぽにすることかもしれない。

明確な意味を持たないものをずっと見つめるとき、人はそこに吸い込まれていきます。そのとき、心はその空間ではなく、見つめる先の世界を漂います。

雲の世界を漂う。自身が漂う。そのとき浮かんでくる景色、浮かんでくる人、改めて今自分がいる環境に感謝できます。そして、新たな一歩をいい意味で「空想」することができるのです。それは事業家というものではなく、夢想家なのかもしれません。しかし、そこに「起業家」があると思うのです。

今あるものを最大化するために汗をかくことは毎日繰り返されることでしょう。繰り返すべきことでしょう。ですが、何もない真っ白な紙に絵を描いていくには、あるものではなくあるべきもの、今ではなく将来が描けなくては未来にはならないのです。そして、その絵が描けたときに業は起こると思うのです。

今あるものは毎日の中で触れています。それを当たり前のことにせずに切磋琢磨、常に新しくしていくことは当然大切です。それとは別に、浮かんだ空間で、過去・現在・未来を自由に行き来することも大切なことだと思います。そういう視野・そういう時間を持ち続けないと、人は消費されてしまいます。自分を生産(ときには再生産)することはとても大切なのです。

ただ空を見ます。そこにはただ雲が流れています。
posted by 奥田圭太 at 01:16| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム:言葉津々 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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